なおぞうのタイ日記

バンコク在住 二児のパパの日常

書評 秀吉・家康・政宗の外交戦略

グローバリゼーションが叫ばれて久しいですが、本当に今の時代、物理的な距離というのは何か物事を行う上で、あまり障壁にならないと思います。

グローバリゼーションを可能にしてる要因は、長距離移動のコスト低下(要は航空運賃の低下)と、インターネットの普及でしょうね。

それで、グローバリゼーションってのは日本にいて海外のものに触れる機会を圧倒的に増やしてくれていると思いますが、私のように海外に住んでいる人間からすると、海外にいても日本のものに容易にアクセスできることも意味します。

ここでタイトルに戻るのですが、日本の本もKindleを経由して、容易に安く手に入れることができます。読んだ本を並べて眺められないことを除けば、やはりKindle超有能です。そんなKindleを活用して読書をしましたので、その書評をしたいと思います。

さて、読んだ本は秀吉・家康・政宗の外交戦略というタイトルですが、まずなぜこの本を選んだか説明しておきます。

個人的に秀吉は三英傑の中で一番好きなのですが、やはり晩年の行いが残念であることは否めません。その晩年の狼藉の中でも、文禄・慶長の役(朝鮮出兵)をなぜ実施したかは、なかなか合理的な説明ができず、秀吉ファンの私としてはどうにかこの行為を少しは正当化できる背景が見い出せないかと常々思っており、その希望を満たしてくれる本を探していました。この本の説明文では、朝鮮出兵を秀吉なりの外交戦略の一部と解釈していると記載があり、まさに自分の疑問に答えてくれる本と思い購入に至ったわけです。

読んだ感想ですが、、、10点満点中4点というところでしょうか。まぁ結論から言うと、私の疑問、なぜ秀吉は朝鮮出兵を行ったかに対する答えが、クリアでなかったというのが低評価の理由です。

 

筆者曰く、秀吉の朝鮮出兵は日本の防衛を意識した、外交戦略だったということです。もう少し深堀すると、朝鮮出兵を実施する事で、日本の武力を当時の世界の強国であるスペイン、ポルトガルに示すことで、それらの国の日本に対する侵略意図を削ぐ目的だったというのです。

実際にこの時代はイエズス会等を中心に布教活動が実施されていたのですが、その布教がこれらの国による日本侵略の内部工作であり、それに気付いた秀吉が、バテレン追放令を発布した上で、更に日本への侵略意思を挫くため、朝鮮出兵を通して武力を誇示し日本に侵略するのはハイリスクであることを示した。結果的に、スペイン、ポルトガルのアジア武力支配は東南アジア圏に限定され、日本への武力進行は実施されなかった、というロジックです。

 

正直、なかなか苦しいロジックかなと思います。

結果的に朝鮮出兵が、日本の武力レベルを示し、スペイン、ポルトガルの武力進行を防いだ可能性はあると思いますが、秀吉の朝鮮出兵の意図が本当にそこにあったというには論理の飛躍があると思います。

出兵の目的を武力レベルの誇示とするならば、出兵はあくまで朝鮮内に留めればいいだけで、明まで進行する必要はありません。それを行うと、無駄に日本の戦力を疲弊させ、スペイン、ポルトガルの進行を許す可能性もあるからです。

それをせず、明まで進行した上で、朝鮮や明に日本への服従を求める秀吉の姿勢を鑑みるに、やはり出兵の目的はあくまで領土拡大にあったのではと考えるのが自然と思いました。

 

本を読んだ上で、晩年の秀吉の各種行動はやはり擁護できるものではなく、自らで豊臣政権の命を縮めたと考えるのが自然かと思いました。

どんなに天下取りの過程が素晴らしくとも、一度権力を握ってしまうと、腐敗が始まる。おごれる平家は久しからず、というのはいつの時代も共通なのかと思いました。